団子奇譚 3


「左近、どうだい?」

三色の花見団子を口に含んだまま固まってしまった俺に対して、おねね様は丸い目を輝かせて問うてくる。
取り敢えず口を動かし続けるが、噛めば噛む程、口中を支配する味覚 ――― 強烈な甘さ ――― に胸が悪くなりそうだ。


     ある程度、予想はしていたが……これ程とは……


まぁ、順当に考えれば、甘すぎる団子や餅に秀吉様を含め全員が辟易したってところだという俺の予想は当たったが、想定外なのはその甘さだ。
まさか、砂糖の塊のようなその甘味で本気で気分が悪くなるとは思わなかった。


     確かにこれじゃ、みんな逃げ出すだろうなぁ――――


心中の感想は決まっていたのだが、いざ言葉にしようとすると、俺をジッと見つめるおねね様の期待を込めた目に圧倒され、出かかった感想の言葉を飲み込んでしまう。
所謂、「可愛い女性に弱い男の微妙な心理」といったところだろう。
おねね様の強烈な視線に耐え切れず、ふと目を逸らすと――――


     と、殿ッ!!?


こっそりと襖越しにこちらの様子を窺っているのは、我が主。しかも――――


     大谷殿や小西殿まで…………


小姓時代から殿と仲の良い、大谷吉継殿や小西行長殿の姿が見える。殿にとっては、「同じ釜の飯を食った仲」というヤツだ。まぁ、その釜の飯を作っていたのが、目の前のおねね様なんだが……
その三人が、揃ってこちらを覗き見ている。言外に「いったい何やっているンすか?」と睨んでみると、各々手にした半紙で何やら伝言を送ってくる。
不審に思い、目を細めて確認をすると――――





2006/06/16