団子奇譚 13


「左近殿が納得されたところで、紀之兄さん、続き〜♪」

子供がお話の続きを強請るような態で、小西殿が先を促す。古畑・大谷殿は咳払いをひとつ。おもむろに話を続けるのであった。

「さぁてと……、今回の事件。事の発端は、佐吉とおねね様。事件を解決するにはぁ、このふたりを納得させる他ありませぇん」
「んなことは、百も……」
「しゃらーっぷッ! 人の話は、最後まで聞くッ!! ママンに教わりませんでしたかぁ?」


     ママンってなんだよ、ママンってッ!!


最早、俺は突っ込みも許される身となったようだ。疲れ切った俺は、ただただ肩を落とす。

「ハイハイ……」
「『はい』はひとつでェす。まぁ、続けましょうかぁ。まず、事件の発端は、おねね様の団子の味でェす。はい、小西君ッ!」
「事件の発端である、おねね様のお団子の味ですが、調査の結果……」

いつの間にか、手に警察手帳(もどき)を持った小西殿が、ビジネススーツ姿で大谷殿の声に答えて背筋もビシッと敬礼を返す。

「ある日を境に激変していることが判明しております(キラン)」
「っていうか……」


     アンタら、当事者じゃないんですか?


俺は危うく口から零れでそうだった皮肉を喉の奥に押し留める。これ以上、このふたりに関わり合いたくはない。

「ふぅ〜ん。そのある日というのは……」
「秀吉様の中国遠征時、堺の商人『小西隆佐』と接触した時分からです」
「ほうほう。それで?」
「『小西隆佐』は、南蛮および明との貿易を行う商人であります。その主な取扱商品は薬です」


     いや、それあんたの実家のことですからッ!


「その時分の小西家から長浜城への納入品のリストを入手しました。これです」

小西殿は実家から持ち出したと思われる古びた紙の束を取り出す。
それをペラペラと捲りながら大谷殿は唸る。


     てか、ワザとらしいつーのッ!


俺は既に口を閉ざし、心の内でひとり突っ込み。これぐらい許して貰わないと今にもストレスで胃に穴が開きそうだ。

「うぅ〜ん。当帰に芍薬、杏仁に陳皮、漢方薬の原料に混じってぇ……これは塩に南方の胡椒や生姜ですかぁ? おやおや、コレ食材ですよねぇ」
「医食同源という言葉があります。薬種問屋では、漢方の材料の他に、こういった食材を扱うことがありますので……」
「詳しいですねぇ、小西君」
「実家が同業のものですから」


     テレながら言うなぁッ! 今、話に上がっているのがアンタの実家だぁッ!!


というか、さっきから何の小芝居なんだ? ねぇ、俺はあんたらの観客? もとい玩具?
殿に助けを求めたいが、殿は隣の部屋でおねね様と談笑中。珍しく楽しげな笑い声まで聞こえてくる。
所謂、「孤立無援」。果たして、俺は一体どうなるんだろう(遠い目)





2006/12/04