団子奇譚 11


「左近殿。ほい、これ」

相変わらずの満面の笑顔で小西殿が俺に何かの包みを差し出す。

「こ、これは?」
「そろそろ団子事件《解決編》やらんとな。いい加減、管理人もネタ忘れそうになっとるしなァ」
「なんつうご都合主義な……」
「イヤなら別に構わへんのやけどな」

何やら意味ありげにある人物に視線を投げかける。

「紀之兄さんにいいようにされたいって云うM体質なら、俺は止めへんでェ……。見ている分には面白いしィな」
「じょ…冗談じゃありませんよッ!!」

素で冗談ではない。これ以上は身の危険。いや、既にレッドゾーンに突入済み。
血の気が失せた俺の顔を見て、とっても嬉しそうに小西殿は手に持った包みを俺に押しつける。

「ほなら、これ着たってやァ」

カラカラっと笑い声を立てる小西殿は、まるで悪戯小僧のようだ。
これは、ひょっとして―――――


     前門の狼。後門の虎 ってヤツか?


どっちに転んでも俺にとって良い結果にはなりそうにもない。どうしようかと躊躇している間に―――

「行長。左近は何を難しい顔をしておるのだ? というか、あの包みは?」
「あれか? あの包みはとある南蛮衣装や。なんでも、どんな難事件も解決してくれるちゅう魔法の衣装や」
「なんとッ! そんなスゴイ衣装が南蛮にはあるのかッ!」
「そうやでェ、凄いやろッ! これで、何でおねね様の団子があんな殺人団子なのかとか、これからどうしたらエエのかとか、全部解決するでェ」
「ホントッ!? 行長ッ!!」
「ホンマですよ、おねね様。魔法の衣装を着た左近殿がみーんな解決してくれますさかい。安心したってやっ!」
「よ、よかったぁ〜。これで、お前様やみんなにおいしいお団子を食べて貰えるんだねッ!」

期待に満ち満ちた殿とおねね様の熱い眼差しが俺に降り注がれる…… ってッ!!


     思いっ切り、外堀埋められているじゃないッスかぁ―――― ッ!!(ハウッ!)


これでは、断ることも逃げ出す(いや、殿を置いて逃げるつもりはないが)こともできない。
殿やおねね様にあることないこと(と思われる)ことをベラベラと喋り続ける小西殿の首根っこをひっつかまえて俺は彼を問い詰める。

「って、アンタ。さっきから何か面白いこと口走っていますが、その魔法の衣装とやらは真の話なんですか?」
「そんなん、嘘に決まっているやンか。あんた、頭よろしいのに本気でそないなこと信じてはりますの?」

あっさり否定されちまったよ、俺。いったいどーすんのよ?





2006/12/04